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【油絵専攻】芸大模試
2022年 11月 03日 10:55
先日、10月30日は東京芸大公開実技模試の講評が行われました。名古屋校から選抜作品・外部生徒も多数参加となり、開場はなんとも言えない緊張感がありました。その際に講評には参加しませんでしたが作品を観覧してコメントをしてくれた著明な方がいます。こちらの方です!
油絵専攻の皆さんこんにちは。どうも宮沢賢治です。
童話作家、詩人としての私の作品。「銀河鉄道の夜」や「注文の多い料理店」などを一度は目にしていただく機会があったかと思います。その中で銀河鉄道の夜では「ほんとうにみんなの幸(さいわい)のためならば 僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない。」という台詞を物語の主人公であるジョバンニが言っています。これを私は「誰かのために」する奉仕と解釈していただきたいです。世界が幸福にならないうちは個人の幸福などあり得ない。個人は自身以外の要素によって生かされています。「ひとというものは、ひとのために、何かしてあげるために生まれてきたのです」という母の教えを種として育まれた私の信条は「誰かのために」であり、私の作品全体の根底に流れる大切な思想です。
さて、今回の模試の課題文を読みました。白紙のノートを渡されて「誰かのために描きなさい」という設問。まるで狙ったかのように私の思想をなぞる問いかけだと感じました。また素敵な要求とも同時に感じています。幼い子供が先生、親、憧れの人などに似顔絵を渡すような微笑ましい光景をイメージして。皆さん各自の持論、展開を楽しみに作品と付随したノートを観覧させていただきました。でもなんだか設問に対して「誰かのためにではなく自分のため」「自分のためにすることが自分の親しい人間のためにもなる」「架空の物語の登場人物を他の誰かと見立てる」などカテゴライズすると多彩さに欠ける。世間柄や年相応な捻り、偏りを感じることが多い印象でした。
なので純粋に誰かを思ってみませんか?
この設問は誰かの幸福を産めるものです。例えば口数少ない祖父が自分のために描かれた油絵を見て気恥ずかしそうに微笑む姿。幼い頃にクレヨンで描いた遠足のスケッチを見て懐かしそうに話す両親の笑顔。他にも各自が想像できるシチュエーションは多々あるはずです。そうやって周りの人の幸福を見て自分の仕事の価値を誇れる。幸福が自分の自信として戻ってくるところまで想定するのが今回の設問で到達できた一つの形ではなかったのでしょうか。
試験本番に向かうにあたって、当日は周りに意見を聞くこと叶わない孤独な戦いとなります。皆さんの孤独な戦いを支えるのはその日まで積み重ねてきた研鑽、そして比例するように手元に宿った技術による自信です。そこでもうワンポイント、周りの幸福を目指して研鑽してください。その行いは巡り巡ってあなたの作品を支えてくれる自信の一助となることでしょう。
以上が宮沢賢治さんからのメッセージでした。
視野が自分の周りに狭まるのは今どきな癖なんじゃないかと個人的にも思います。賢治さんが言うように「誰かのために頑張ること」が狭まった視界を外へ向けるきっかけになるかもしれません。皆さんも視野を広く、自分の作品の肯定感へ繋がる制作を意識してみては?