河合塾美術研究所 新宿校 授業風景

映像専攻 の記事一覧

映像専攻 武蔵美映像合格者再現作品解説 4

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2020年 05月 17日 09:46

武蔵野美術大学映像学科合格者再現作品解説。第四弾も「間に身を置いて」がテーマだった2019年度の作品です。地面に落ちた蝉。それに近づくと突然鳴き出し、飛んでいく。極めて身近な出来事ですね。同じ経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。ただしそれだけでは、感覚テストの課題に応える映像作品としては成立させられない。では、そこから何を考察するか?それは暦や気温に押し流されるのではない、実感としての季節の推移です。これも決して独自性やヒネりのある視点ではありません。出来事そのものは実にシンプル。それが作品として成立して高く評価されたのは、そのシンプルな時間の流れを「重層」させたところにあると言って良いでしょう。この重なりが最大ポイントなのです。

蝉が飛び立つ小数点以下の瞬間、シーツが乾いていく數十分、数週間遅れでやってきた夏の終わり、幼年期から過ごしてきた自身の十数年。いくつかのそれぞれ尺度の違う変化が同時進行して、ほんの束の間交差する。そのひとときを切り取っているわけですね。だから決して、なんでもない時間ではないのです。普段は意識もせず流れていく出来事たちが、ある一点で、しつらえた事件性に頼らずに、カチッと合点する。丁寧な観察眼をもって日々を過ごせば、生活のなかにもこういった時間が存在していることに気づけるわけですね。

そして、画面。映像的な要素はどうでしょう。理科の授業で行われる解剖のような蝉の構造観察から、画面には描かれていない、その蝉が飛び去った先の晴れた空。微細な局所から広がりのある風景までをしっかりと押さえつつ、ささやかに画面左→右へと向けて風を吹かせています。

「わっ蝉生きてた!」というなんとも小さく、どこにでもありそうな出来事から、無理なくその周囲を想定する。それらが「時間、推移、変化」という主題のもとに絡み合うことで、言ってみればただ季節が移っていくという当たり前の事象を、これだけ重層的な映像で印象づけられる。画面左下にいる、まだまだ飛びたい蝉も、なんだか平べったくて愛嬌のある姿に思えてくる、そんな一作でしたね。

映像専攻 武蔵美映像合格者再現作品解説 3

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2020年 05月 07日 16:24




武蔵美映像合格者再現作品解説第三弾はこの作品です。2019年度、テーマは「間に身を置いて」でした。一見、極めて地味な見た目ですね。雨が降っている、そんな印象だけが伝わってきます。中身はというと、まさにその通り。雨が降っているだけなのです。夕立ちとその後の様子をバスの車窓から、ただただ緻密に丹念に追い続けています。何も起きない、起こさない。もしかしたら感覚テスト史上、最大級にミニマムな作品かもしれません。しかし読み進めるうちに見えてくるのは、最小限の場所と出来事から引き出される観察と考察、それが異常なほどにマキシマムであるという事実です。

窓の雨粒を見るのが好き、という作者の小さな嗜好からはじまりました。講師と話していくうちに、景色を移り変わらせる乗り物で動きを出そう、という発想が加わり、そのあとはご覧の通りの展開です。雨とバスしかないこの状況に具体的な皮フ感覚と臨場感を与えるため、あらゆる「五感」、つまり「感覚」が盛り込まれました。

車内には嗅覚が。ドアとエンジンからは聴覚。靴の中には触覚があり、数センチ先のガラス面への接写から数百キロ先の上空まで望遠される視覚も当然ありますね。靴下の温度、雨粒の行方、曇天から晴天へ。それらは時間と空間が推移するとともに極わずかに、あるいは大胆に変化していきます。まさに「感覚」にまつわる素材の全てが、「場所」と「出来事」のなかで、極めて丁寧に構成、編集されているわけです。

基本的に画面は、枠の中全体に渡って描かれたほうが見映えはもちろん良くなります。とはいえ場所と出来事がここまで削ぎ落とされると、どこの何にカメラを向ければ良いのか?その判断は難しくなってきます。しかし、その答えは明快でした。見たものを素直に真正面から描く。それはまるで、停車ボタンを押すのも忘れて窓枠にかじりつく園児の眼差しにも似た素直さです。密集する雨粒、しかし文字も密集する。ならばさっぱりと住み分けよう。これもまた素直すぎる判断によって、1/3の画面が描かれることとなったのでした。

誰しも経験したことがあろう日常のひとコマ。自身の「感覚」を伝える課題に、大袈裟な仕掛けは必要ありません。求められるのは「感覚」なのですから。それを「五感による観察と考察」と置き換えて解釈してもよいでしょう。日常だからこそ、その場所、出来事の只中にいる当事者としての真摯な観察が可能になり、それによって地に足のついた、それでいてロマンティックな考察が誘発されたわけです。最後は今夜の空模様に思いを馳せながら、夕立ちの残滓と戯れる微笑ましい所作で締めくくられます。その絶妙な時間表現によって、実に肯定的な心象をもって観終えられる一作となりました。

では合格者作品解説、次回もご期待ください!


映像専攻 武蔵美映像合格者再現作品解説 2

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2020年 04月 28日 17:24





武蔵美映像合格者再現作品解説第二弾はこの作品です。とにもかくにも、この「移動」する視点ですね。映像という媒体以外では表現しえない風景です。眼前で空間が動いている。そこに時間が流れている。それだけです。それだけなのですが、それをとらえることで、それだけで「映像」が出現するのです。映像技術、表現が生まれてから120年以上変わっていない史実です。被写体はただそこにあるだけ。それを切り取る視界が移動する。そこに生まれるリズム。連続する景色はミュージックビデオにも応用できそうな音楽性を有しています。我々の日常には、こういった連続性が実に多くあふれています。横断歩道にブロック塀、フェンスや階段、ガードレールと電柱、その電線にとまるムクドリたち...移動を手段ではなく目的ととらえることで、街には連続によって出来ているものがいくらでも存在していることに気づけます。




その連続性を最前面に押し出すような構図がとられています。この画面にはカメラマンの視線が存在しているのです。どこに座って、どちらを向いて、どのような対比と運動で空間を切り取るか。それが極めて明確なのです。描いているというよりも、撮影している意識ですね。助手席から身体をひねり、進行方向の斜め後ろに目を向ける。右手前から現れて左奥へ矢継ぎ早に消えていく鉄骨を近景として、遠方には同方向へ微速でフレームアウトしていく島を収める。物理的な動作をきっかけに、実に巧みに心情の描写へ移行させています。




そこに記された内容を一言で言えば、離郷ですね。決して独自性の強い題材ではありません。作者自身は島育ちではないのでフィクションです。前回解説した「煙突」が極めて日記的なドキュメントだったのに対して、設定された出自の少し特別な日の話です。とはいえ、派手だったり特殊な状況とはいえないこの内容のどういった点が評価につながったのか?




それは、いかにすれば「映像」として印象づけられるのか、に焦点を絞っているからに他なりません。前述の画づくりはもちろん、文章でも映像をしっかり意識しています。冒頭を少し読んだだけでもそれがわかりますね。視覚と嗅覚、聴覚が現れて、そして触覚(気温)。内面を吐露してしまえば簡単ですが、それは「映像」ではない。いつもの橋を走る車、意図を感じさせない所作から車窓へ視線を移すことで、やっと主題である郷愁が出現します。このカウントダウンという語彙が効いています。その均質な時間経過によって、作品全体のテンションを丁寧に制御しています。こういった場面にありがちな湿り気を拒否するような、実に抑制の効いた見せ方ですね。心情ありきではない、鉄骨と島の多層構造を持った映像から引き出された郷愁です。まず「映像」なのです!




この作品も、やはり日常的な観察から生まれているわけですね。文章(物語)ではなく、あくまで「映像」で課題に応えていることがわかります。最後に交わされる方言も、朴訥ながら抜け目ない演出が施された一作です。




では、次回の合格者作品にもご期待ください!

新宿校 入試合格速報

河合塾美術研究所 合格者速報

※3月20日現在判明分

2020年度芸大入試合格速報!今年もたくさんの方々が志望校に合格しました!

特に日本画・芸術学は合格者数全国1位!!

武蔵野美術大学・多摩美術大学合格実績!

ムサタマ合格実績は新宿校のみの数値です。

志望コースの多くの方が武蔵野美大・多摩美大に合格されました!

合格されたみなさまおめでとうございます!

私大デザインクラス、映像科クラスは少人数ながら抜群の合格率を誇り、よろこびの声が続々と届いています。

よろこびの声は新宿校校舎にて掲示させて頂いています。

新宿校 入試合格速報

河合塾美術研究所新宿校 合格者速報

※3月28日現在判明

上記は新宿校のみの合格者人数です!

合格されたみなさまおめでとうございます!

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武蔵野美大・多摩美大合格者は、河合塾美術研究所新宿校在籍者(塾生)のみの合格者人数です!

補欠者・講習生は含みません。

<デザイン科クラス合格者>

デザイン科以外のクラスも大活躍!!

合格されたみなさま、おめでとうございます!

※合格者は重複合格者を含みます。

美術研究所新宿校に、よろこびの声が続々と届いています。よろこびの声は新宿校校舎にて掲示させて頂いています。

河合塾美術研究所総合格者数・合格実績はこちらから

http://art.kawai-juku.ac.jp/result/