「Walk on!」(歩みを止めるな!)
これは稀代の格闘家ブルース・リーの座右の銘です。
「おれたち、もう終わっちゃったのかな?」
「バカヤロー、まだ始まっちゃいねえよ」
これは北野武監督作品『キッズ・リターン』のラストのセリフ。
今年も東京藝大の結果が出ましたね。
受かった人もいれば、受からなかった人もいます。
受験では合格者が「勝ち」の扱いを受けます。
しかしそれは一度勝ったというだけのこと。
受験では不合格者は「負け」の扱いを受けます。
しかしそれは一度負けたというだけのこと。
一度の勝ち。
一度の負け。
それで、すべてが決まるわけがない。
大切なのは、それまで何をしたか。
これから何をしようとしているか。
今年の合否が出た直後のこと。忘れられません。
あんなにがんばったのに、まさか落ちるとは。
なんで落ちた? おかしいでしょ?
言葉を失いました。
沈黙を破ったのは、不合格になった彼、彼女たちの言葉。
「やり切ったから悔いはありません」
(強がりも少しはあったでしょうが)本心の言葉でした。
いやいやいや、くやしいですよ。
こうしてブログを書いている今も、くやしいです、全然納得しちゃいないです。
それでもなお、彼らの「やり切った」をわれわれ講師も共有できます。
今年は合格ではなかった人たち。
作品はどれも力作です。
作ってよかった。素直にそう思えます。
なので、すこしでも多くの人に見ていただきたい!
Eさん。
なんと、新宿駅前にあるユニカビジョンで映像作品を放映しました。
準備も費用もけっこう大変。
そこまでやるか?
やりたいから。見てほしいから。
冬の新宿の夕方から夜を流れる、いくつも部屋、もつれあう二つの手。
生を肯定する、なんという愛おしさ。
Kくん。
2カ月かけて作った、愛馬を模した高さ4メートルの木組みの馬の像。
それをリヤカーで引いて、新宿から埼玉まで30㎞超、歩き抜きました。
なんでそんな無茶なことした?
それを愛馬に見せたかったから。
多くの人の力を借りながら、汗と涙を流し、やり遂げたプロジェクト。
アートってすばらしいな!
Mさん。
生まれたときからつづく嘔吐癖を美しい結晶たらしめた立体作品。
嘔吐ですよ、げろですよ、誰がそんなもの見たいですか?
「わたしが見たいんです!」(作者の叫び)
誰に何と言われようとも、作らねばやまない衝動。
その思いを形にするための試行錯誤。
完成した作品、びっくりするほど美しかった!
Sくん。
小さな空き地から生まれ出る壮大な神話的想像力。
なんかやばい、いろんな意味で変な作品。
ゆるそうな映像なのに、実は、作者はけっこう人生賭けてます。
取るに足らないようなことに、人生を賭ける勇気。
わかりたくないけど、わかりますね~。
やり切ったSくん、これは絶対次につながります。
受験を目的とした制作ですが、受験を遥かに超えた、生きるためのアート。
作りたい。表現したい。伝えたい。その一念。
なんてピュアなんだ! 純粋すぎるほど純粋です。
でも、アートをやるって、そういうことですよね。
河合先端、これからもそこを大切にして行きたいです。
本当にみなさん頑張りました。
この一年、みなさんの姿に、われわれ講師も励まされました。
これからも制作はつづきます。
またお会いしましょう。
ありがとう!