河合塾美術研究所 新宿校 授業風景

Gallery Kart の記事一覧

KJチャンピオンシップ【日本画】

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2023年 09月 18日 17:49

こんにちは。日本画専攻です。

二学期上旬、河合塾では毎年、自由制作展の「KJチャンピオンシップ」が行われます。

内外問わず自由に見ていただける展覧会です。

日本画専攻では有志学生による自由制作と、本科生が授業で描いた日本画を展示します。

自由制作は平面を始め形式は自由で、立体、漫画、映像など学生が作りたい作品を作ります。それに対し、日本画実習では基本的な日本画材の使い方や、制作の仕方を学ぶため、モチーフのスケッチ→下図作り→転写→骨描き→彩色という流れで制作しました。

日本画は画材の扱いが難しいため、講師が実演しながら一緒に描きました。

スケッチは普段の受験対策での課題と技術的には変わらないのですが、最終的に本画にすることを想定して描くところが普段と少し違います。構図をどうしようか、背景の色が入るので、目立つところ目立たないところをどう作るかなど考え、選びながらスケッチします。

転写や骨描きなどもただ写すのではなく、生き生きした線を意識しながら描いていきます。みんな真剣です!

絵具の溶き方、グラデーション塗り、胡粉の溶き方とレクチャーを挟みながら制作を進めていきます。普段と違った描き心地なのでうまくいく部分といかない部分があったかと思いますが頑張って仕上げていきます。

完成した日本画は自由制作と共に学生たちで協力して飾り付けをし、KJチャンピオンシップで展示しました。KJは内外の人に見てもらえる年に一度の展覧会です。

学生にとっては作品を作るだけでなく、見てもらうことを経験できる貴重な機会です。大学に入った後どのように勉強していくのかを準備を通して体験できたと思います。

展示の一日目には日本画専攻内の講評がありました。

自由制作を展示した人は、自分の作品の前で作品の紹介をしました。これも大学の授業の講評で毎回行うので、緊張もあったかと思いますが良い経験になりました。

KJチャンピオンシップで自由制作、日本画、自画像を展示し、内外の人に見てもらうことができました。作品は自分の描きたい(作りたい)気持ちが一番大切ですが、人に見てもらうこともとても大事です。今回の経験を今後の制作に活かしてほしいと思います。

KJ Chanpionship 2023!

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2023年 09月 13日 09:54

先日、河合塾美術研究所新宿校では学生による自由制作展「KJ Chanpionship」が執り行われました。

受験勉強にみっちりのめり込んだ夏期講習。

そこに間髪入れず自由制作!

かなりハードな日々を過ごしながらも、今年もパワフルで個性豊かな作品が乱立していました!


こちらは講評と表彰の様子です。

近年はコロナウイルスの影響でみんなで集まって講評を聞く機会がなかなかありませんでしたが

今年はワイワイ、ガヤガヤと全体講評していきました。




そして今年のグランプリはなんと、3DCGアニメーション作品でした!!

クオリティがまさにプロレベル!

圧倒的な存在感でしたね~

また、今年も例年通り自画像コンクールも並行して行われました。

こちらは"B3""白黒"という同じ条件の中で専攻を超えて100枚近くの作品が並び、その中で

最優秀賞はぶっちぎりの得票数でした、、、!

近くで見れば見るほど緻密な描写に目を奪われる作品でしたね!



KJ Chanpionshipは2日間というとても短い期間でしたが、

今月中1F Gallery Kartにて、受賞者作品展を行っています。

「見逃してしまった!!」という方はぜひご覧になってください!

「日本画制作実習」

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2022年 09月 27日 15:03

こんにちは。日本画本科です。

河合塾日本画専攻では2学期のはじめに日本画制作を行いました。

「日本画科」と言っても入試段階までは日本画材はほぼ扱いません。大学に入学してから初めて日本画材に触れる人も少なくありません。

河合塾では大学に入ってからの学びも意識して日本画材、岩絵具を使った制作も授業に取り入れています。

日本画制作では岩絵具の基本的な描き方を学びます。モチーフをスケッチし、そのスケッチを元に岩絵具で本画を制作します。

今回は白いグラジオラスを描きました。









普段の静物着彩でも花の良い形にこだわろうなどアドバイスされることが多いですが、なぜそれが必要なのかは本画を描いてみると分かります。

日本画は立体表現より平面的に適しています。なのでシルエット等、形の良さで絵のクオリティがだいぶ変わってきます。


そして画面構成、配置によっても絵の見やすさが左右されるのでとても重要です。

モチーフは皆同じでも配置の仕方、花と葉のバランスなどでその人のねらい、個性が出ます。


岩絵具は透明水彩と比べると粒子感があるので普段描いている通りにいかないところもあります。使いこなすまではまだまだ時間がかかりますが、みんな意欲的に制作していました。

















日本画作品は塾全体の展覧会、KJチャンピオンシップに出品し、内外の方に観ていただきました。

KJでは日本画科は有志で自由画制作も出品しており、その飾りつけは出品者も出品者ではない人もみんなで協力して行いました。

自由画を出品しなかった人も大学に入って展示をする時はどのようにするものなのかなど体験できて良かったと思います。

















基礎を固める1学期、そして制作をより深めていく2学期、様々な学びを取り入れ、制作に繋げていきましょう。

河合塾デザイン工芸科出身で大活躍中のアーティストやデザイナーを紹介する展示、開催中です。

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2020年 10月 12日 19:53

河合塾美術研究所デザイン工芸科立体空間系コースで学び、現在さまざまな分野の第一線で活躍中のアーティストやデザイナーを紹介する展示が開催中です。
アーティストのライブ衣装や舞台美術、テキスタイルデザインも手掛けるファッションブランド・spoken words project主宰の飛田正浩、絵本やイラスト、テレビ番組でも大人気のtupera tupera(ツペラ ツペラ)の中川敦子、ブランドディレクションや衣装製作など幅広く展開するYUKI
FUJISAWA(ユキ フジサワ)主催のテキスタイルデザイナー藤澤ゆき、ISSEY MIYAKE BAO BAO POP-UP STOREやLUMINE ZERO MARKETなどを手がけるmoult(モルト)主催の吉田佑介をはじめ、大坂なおみ選手のラッケットの開発、新型FITやレクサスをデザインしたカーデザイナー、その他インテリアデザイナー、ファッションデザイナー、工芸作家などとして大活躍中の卒業生22名をピックアップして紹介します。将来の夢を実現させた先輩たちの勇姿をぜひご覧ください。

会期:2020年10月12日〜10月22日
会場:河合塾美術研究所1Fロビー


gallery Kart「人体から学ぶもの-合同人物クロッキー&デッサン展-」

今年も始まりました!

入試課題でも人物が扱われることの多い、日本画・彫刻・油絵・先端の4専攻で、合同人物課題を行いました。

こちらで制作された、人物クロッキー&選抜デッサンの展示を行います!


「クロッキー」とは、
簡単に言うと速描きですが、主に動きのある動物、人物を描くことが多く、細かい描写というよりは対象の動きを正確に捉える事を目的としています。

それに加えて、「ドローイング」としての魅力、線の面白さや空間の美しさなど、人物自体の正確性を超えた、生きた線や画面感を追求することも大切です。

スケッチとも似ていますが、下絵というより、特に短い時間で描かれた、単独でも本画にも負けない絵としての魅力をたたえたものをクロッキーと呼びます。

そのために、短時間で対象と緊張感のあるやりとりができるための観察力を培っていきます。

今回は4専攻合同ですので、会う機会の少ない別の専攻の講師もそれぞれ指導を行いました。

普段と少し違った視点から見られることで新しい発見があったり、逆にいつもと同じことを言われたりして、専攻が違っても大切な普遍的なことに気づけるように、という2つの意図があります。

他専攻の講師や生徒から刺激を受けながら、それぞれが懸命に制作した作品をぜひご覧ください!



「人体から学ぶもの-合同人物クロッキー&デッサン展-」

2020年7月5日(日)〜7月18日(土)/入場無料
10:00〜18:00(会期中無休/日曜・最終日~16:00)

【Gallery Kart おいしいものコンクール「かわい食堂」結果発表】

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2020年 06月 23日 16:59





おいしいものコンクール「かわい食堂」へのノミネートは全82作品!
基礎中学から社会人OBOGまで様々な方のご参加、誠にありがとうございました!

皆さまの投票により、「かわい食堂」の栄えある第1位が決まりましたよ!
今回のコンクールは、実はとても接戦で、何度も1位が入れ替わり、締め切り時間ギリギリまで誰が1位になるかわかりませんでした。
投票日の天気や時間によって、食事系なのかスイーツ系なのか投票数も少し変化していそうでした。
今回は、それほどみんなダイレクトに「おいしそう!」を刺激する作品揃いでしたね。
皆さまも満腹感が得られたのではないでしょうか♪


そして最優秀賞に輝いたのは・・・・・・


なんと!現在高校1年生、基礎中学・高校受験コース出身者のNくんです!!!
おめでとうございます!!!!!




コピックと色鉛筆での作品です。シンプルにおいしそう!というシズル感も満載です!背景のカウンターの様子や、はみ出ている肉の角度、海苔の山になっている感じ、油の表情が繊細でスープの見え方などもとても良く、構図も安定しています。そそられる要素をしっかりと出せていますよね。
絵を描くことに対して自分で分析して、様々な技法でチャレンジをしていることが伺えます。
「おいしそうに見える」というのはどういうことなのか。このラーメンを本人が見たときに「すごい!おいしそう!」と感じた衝撃があったことが伝わりますね。あ〜〜本当にお腹すいてきちゃいますね!
また、作品チャレンジ待っていますよ!!!



続いて、優秀賞に輝いた作品は同順位になった2点。
偶然にもW鯖になりました!!

皆さん口の中には香ばしさの中に、まろやかな油の甘みと塩分のしょっぱさが広がっていますよね?!
さば弁はデザイン工芸専攻のFさん、さばの塩焼きは日本画専攻のMさんです!
お二人とも、おめでとうございました!



以下の順位は12位までGallery Kart内に張り出してあります。
惜しくも入賞を逃してしまった皆さん、本当に票数は僅差でした。
作品内容ももちろんレベルアップしていきたいですが、画面のヨレや、汚れ、構図などももう一度見直してみましょう。
作品を人に見てもらって、選んでもらうということを体験してみて分かったこともあると思います。友達同士でも、作品の見栄えや、もっとおいしそうに見せるには?など、そんな話をしてみると良いと思いますよ!


6月28日までの今週一週間は、受賞者と一緒に全作品も展示をしてあります。見逃している方は、是非ともめくるめくおいしいものたちの待つ「かわい食堂」へ足をお運びくださいね!


そして、6月27日の土曜日 17:00から表彰式を行います!
密になりすぎないように行いたいと思います。是非参加してくださいね。

【Gallery Kart おいしいものコンクール「かわい食堂」始まりました!】

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2020年 06月 10日 14:44




新型コロナウイルス感染拡大防止のための休講による延期を経て、ようやく、おいしいものコンクール「かわい食堂」が始まりました。
現河合塾生や講師はもちろんのこと、昨年度基礎中学・高校受験コースの生徒さんから、現在芸大美大生の当塾卒業生、さらに、なんと社会人のOBOG!まで、とても幅広い作品エントリーになりました。

内容も、食材としてこれからの料理を想像させるようなものから、前菜、メイン、デザート、パン、などなど美味しそうなものが勢揃いしましたよ!

実際の味覚でなく、視覚からではありますが、甘いのしょっぱいの、甘いのしょっぱいの、甘いの...
これはまさに、めくるめく無限ループです!
よだれが止まりません!!

お腹が空いている人は要注意です。
何か小腹に入れてから、じっくり見てください。
ぐ〜っときたお気に入りを3つ見つけてくださいね!
ギャラリー入口に投票用紙がありますので、是非とも投票をお願いいたします♪

みなさんの投票によって、大賞や副賞の数々が決まります!
投票期間は6月8日から21日の間です。それ以降は、賞を確定した展示となりますので、みなさん早めに投票してくださいね。
賞が決まり次第、表彰式の日程もお知らせいたします。






河合塾美術研究所では、年に複数回「〇〇コン」という、規模やお題も様々なコンクールを行っています。
そこでは、上手い下手などの描写技術だけではなく、そのモチーフ(お題)から「自分は何を感じて描こうとしているか」を再認識することや、
展示を通して「人に自分の作品を見せることに責任を持つ」ことも同時に考えていきます。
あまりうまくいかなかったと感じても、みんなの作品と一緒に展示をして、人と話しながら鑑賞するだけで「こんな風に伝わってるんだ!」など、新たな発見もあるのです。

2020年度の始まりは、新型コロナウイルスで色々ありますが
第一回目のコンクールでは、みんなの前向きな気持ちが賑わいをみせています。
今回チャレンジできなかった人も、是非また参加してみてくださいね!




なお投票に際しては、入口に消毒用アルコールがありますので、手を拭いてからボールペンを使ってくださいね。
ご協力お願いいたします!




図書コーナー側では並行して、塾生によるホームワーク作品も展示しています。休講期間の逆境をバネに創作に向かう作品も、是非ご覧ください。

おいしいものコンクール「かわい食堂」
http://art.kawai-juku.ac.jp/kanto/institution/gll/065.html

【 おいしいものコンクール 〜 かわい食堂〜 】

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2020年 05月 08日 17:34

※「おいしいものコンクール」の企画を少し変更し、規模を拡大いたします!


こんにちは、日本画専攻です!

新型コロナウィルスによる緊急事態宣言で、この間河合塾でも休校が続いています。
2020年度春期講習から日本画主催で応募を開始している【おいしいものコンクール】ですが、
授業開始の変更から二度目の締め切り延長を受け、
日本画専攻の枠を外してどのような作品でも「美味しそう!!」と思えるものであれば、
形態は問わず応募しようということで、全専攻参加型Gallery Kart企画になりました!

着彩の細密作品だけではなく、立体作品もアニメーションなど何でもOKです!
展示の方法が特殊な場合は、提出時にお伝えください。
(※モニター等の用意はご自分でお願いいたします。他の人の迷惑にならないこと。本物の食べ物は不可です×)




ギャラリーカートでは、毎年講師と生徒、OBOG参加型のコンクールを行なっています。
昨年は【スポコン】(スポーツ)、その前は【にゃんコン】(ねこ)、【きのコン】(きのこ)【昆虫コン】(虫)...など様々なテーマでの作品展を行なってきました。今回は【おいしいものコンクール〜かわい食堂〜】ということで5回目になります。


今まで通り、自宅課題としてのおいしいもの細密作品は提出してください。
そして、一人何点でも構いませんので、色々な作品制作にチャレンジしてくださいね!


ここ数年ギャラリーカート主催の【〇〇コン】で大賞を取っているのは
なんとデザイン専攻の講師O先生です!なんて大人気ない!!!
みなさん、連覇を許してはなりません!
現在続々と作品が集まっています!
引き続き、どしどし素敵な「美味しそう!♪」と思う作品を、お待ちしています。

とはいえプライドを持って、OBOG、講師の大人気ない作品も勿論沢山お待ちしています!よ!

詳細はポスター及び以下をしっかりお読みください!


おいしいものコンクール 〜かわい食堂〜 詳細
Gallery Kart
■会期予定      2020.6.8 Mon - 6.28 Sun
■作品提出期間  〜 2020.6.7 Sun 15:00 (締め切り予定)

「 おいしいものコンクール 〜 かわい食堂 〜」は、日本画自宅課題コンクールより、全専攻に拡大して開催をすることになりました。
河合塾美術研究所全専攻の生徒・講師・職員・OBOGその他、新宿校に提出できる方ならどなたでも参加可能なコンクールです。
制作したものをギャラリーカートにて展示を行い、投票をして大賞を決めます!
絵画・彫刻・漫画・アニメーションなど、とにかく「美味しそう!!!」と唸らせられたら、なんでもOK!
食べ物にまつわる作品ならなんでもありの合同作品展です。
(本物の食べ物は不可ですよ×)細密作品も引き続き待っています!
みなさんで、かわい食堂のメニューを作りましょう!?

●参加資格 
河合塾美術研究所在籍の生徒・講師・職員・OBOG / 美術研究所新宿校に搬入・搬出ができる方ならどなたでも

●賞品    
大賞 ︎賞品贈呈 / その他 様々な賞を予定しています!

●作品形態  
自由 ※展示中や搬入出で、他の人の手間や迷惑にならないもの
   ☆過去の作品の出品も大歓迎!

●出展方法  
1. 作品の裏に、名前を必ず書く(分かる)ようにしてください。
2. 5月中も受け付けますが、その場合は教務受付にて、エントリーシートに記入の上、作品を提出してください。
郵送の場合は宛先を「おいしいものコンクール 宛」とし、返却時は取りに来ることとします。
名前や所属、タイトルを忘れずに記入してください。(宅配の場合は元払いのみ)
(住所 〒160-0023 東京都新宿区西新宿7-14-5 「河合塾美術研究所 新宿校 おいしいものコンクール 宛」)
3. 6月からの提出に関しては、各階に設置されているエントリーシートに記入の上、内生は各専攻講師へ、外部のかたは教務受付での提出をお願いいたします。

●採点方法 
みなさんからの投票により、大賞を決定したいと思います!6月8日から21日の間で、一人3票の投票をお願いいたします。みなさんの表が一番多く集まった作品を大賞として、後日表彰式を行いたいと思います!
(表彰式の日程は、6月に授業が再開されてから改めてお伝えいたします)


引き続きtwitterやInstagramなどでのタグ付け投稿を行なった方には、提出時にここでしか手に入らないおいしいものシールと、ちょっとしたおやつをプレゼントいたします!
奮ってご参加ください!(提出の時に分かるようにしてくださいね♪)


ハッシュタグは →→ #2020河合塾美術おいしいものコンクール 


碓井ゆいさん アーティストトーク

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2019年 11月 09日 14:19

2019年11月4日 河合塾美術研究所1Fロビー

河合塾美術研究所ギャラリー Kart Invitation Program の10周年に際し、VOCA展2018でVOCA賞を受賞し、あいちトリエンナーレ2019に招待された、河合塾美術研究所出身である碓井ゆいさんに、河合塾時代が現在のご活躍にどう繋がるか、語っていたただきました!



●60・70 年代アートに触れ、カッコイイ!と思ったことが原点?

司会 受験時代のことや、現代アートに対する興味を持ったきっかけなどを聞かせてください。

碓井 河合塾美術研究所の授業で現代アートのゼミがあり、ヨゼフ・ボイスや、ロバート・スミッソンを見せられて、こういう世界を自分は目指しているのかな、と思ったことがきっかけです。受験時もオールオーバーな、平面的な絵を描いていて、その世界観は後にも繋がっていると思います。多摩美入学後も油絵は描かず、卒業制作もドローイング的な作品を描いていました。


「河合塾時代の静物油彩」

司会 作品のテーマ性は、まだ強くない時代ですね。

碓井 当時のアートシーンは、日常をテーマにした展覧会や、私的で小さな世界をモチーフとした作品が多かった時代で、その影響もあったのかもしれません。大学院は、京都市立芸大に行ったのですが、ものの痕跡などに興味を持って制作をしていました。修了制作は、パーティーの痕跡を、素材をエイジングさせることで表現しています。


「after the party」

司会 喪失感を感じさせるダークな影の面も見えますね。その後の作風も少し感じます。エイジングは、拾ってきたのでなく自分で一から作る。

碓井 そうですね、わざわざ作り込むめんどうくささ...描いたものを汚して壊す狂気のような、人間の欲求にも興味がありました。

●東日本大震災を転機に社会問題に関わる

碓井 2011年の震災、原発問題は本当にショックで、これを機に社会構造に関 わる本を読むようになりました。その中でフェミニズミの本は、ダイレクトに自分の生き方に関わっていると感じたのです。今回展示している「shadow work」は、家事など、女性の労働とされがちな無報酬の労働をシャドーワークと言いますが、実際の「刺?」や「影」と意味をかけています。


「Gallery Kart会場風景」

司会 これまで、個人的で些細なところから作品を作っていたところに、甚大な自然の力と政治的な問題が身に降りかかり、外部のことを考えざるを得なくなったということでしょうか。

碓井 そうですね。ただ、作品を作ることは、政治的なことを伝えるために行っているわけではありません。VOCA賞をいただいた「our crazy red dots」は、高校(都立国立高校)時に疑問を持った国旗問題からで、あいちトリエンナーレ2019に出品した「ガラスの中で」は、自分の不妊治療の体験から生殖医学に関わるモチーフを用いていますが、そういうことを考えている人間がどういうものを作りだすのかを見てほしいです。



「our crazy red dots」撮影:上野則宏氏

司会 先のダブルミーニングだとか、意味と形象を結びつけることは常に考えているのですか?

碓井 ネタ帳はつくっていますね。意味とかたちは、作品によってすぐに繋がったり、繋がらなかったり...「our crazy red dots」の時はすぐにかたちにできましたが、あいちトリエンナーレの時はすごく悩んだり。ネタ帳も、そのまま使えないものがほとんどですが、それでも本を読んだり、映画を観たり、インプットをたくさんしてほしいです。

●美術をやる限り政治的なことから逃れられない

質問 制作をする上で「核」となるようなものはありますか?

碓井 まだ探っていますね。最近は、説明的な意味での「ことば」に頼らない作品を心がけています。造形的な理由と、みんなが文字を読めるという前提に対する疑問からです。

質問 政治に巻き込まれても作る理由は?

碓井 美術をやること自体、政治的なことから逃れられないと思います。それがなければ、アートはただ、趣味の問題になってしまい、力のある人の価値観が勝るということになってしまう。別の政治的な考え方を取り入れないと、それを乗り越えられないと思います。

司会 「別の政治的な考え方」という視点はすごく大切ですね。本日はありがとうございました。

Gallery Kart「クロッキー・人体から学ぶもの」

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2019年 05月 10日 19:40

一番身近にある人体
人体、それは表面のシルエットや線だけではなく、見えない軸、骨格、人体解剖学としての理解や、動き・重力・温度・湿度・・・迫力も含め、ただ見たものを見たように写し取るだけでは表現できない究極のモチーフとして、非常に難度の高いものです。そのため、これまでも様々な芸術家が解剖学を修めて人体を学び、描いてきました。「生きている」ことを表現するには、何を観て、感じて、学ぶことが必要なのか?
 河合塾の特徴でもある専攻を越えた合同授業の第一弾は、人物のクロッキーとデッサンです。
 合同授業での狙いは、各専攻の入試で問われる観点が実は他専攻でも大切であることを再発見し、さまざまな角度からものを見る大局観を養うことです。1学期の基礎力をつける時期にそのような引出しを増やす授業を、当塾では行っています。
 本科(昼間部)は2日間、専科(夜間部)は3日間の中で、様々なポーズのクロッキーを行なったあと、クロッキーで養った観方を固定ポーズに活かしてデッサンを行いました。
 今回は日本画・油絵・彫刻・先端芸術表現の、本専科全員分のクロッキーと、デッサンでは優秀作品を選抜して、本科9点と専科3点の計12点を展示しています。
 クロッキーの展示作業も本科授業の一環とし、「人に見てもらう」ということを意識して配置と展示を行いました。各専攻ごとの壁面に、どの作品をどこにレイアウトするかを生徒同士話し合いながら進めました。展示後は全ての作品を見直し、他の作品の中でどのように見えるか、描いている時とは異なる感覚で見つめることも大切な時間です。展示するということ、また展示された作品がどのような準備作業を経て目の前にあるのかの想像力を養うことも、ここで学べる大切な一つです。
 大学に入ることがゴールではなく、大学を出たあとでも軸となる様々な視点・観点を一緒に学んでいきます。 
 
人体から学ぶ第一歩、是非ご高覧ください。
会期:2019年 5月4日(土)~5月25日(土)
10:00〜18:00(会期中無休/日祭・最終日は16:00まで)/入場無料
会場:河合塾美術研究所1階 Gallery Kart